生成AIによる著作権侵害のリスクとは?企業のAI活用で注意すべき点を弁護士が解説!

「業務効率化のために生成AIを使い始めたが、著作権を侵害してしまわないか心配」「AIが作った文章やイラストを、そのまま自社の宣伝に使って問題ないのだろうか」。

 

ChatGPTをはじめとする生成AIは、文章・画像・プログラムなどを手軽に生み出せる便利なツールとして、多くの企業で活用が進んでいます。その一方で、生成AIと著作権をめぐる問題は複雑で、「知らないうちに他人の権利を侵害していた」というリスクも潜んでいます。

 

本コラムでは、生成AIと著作権の関係について、どの場面でどのようなリスクがあるのかを整理しながら、企業が安心してAIを活用するために注意すべき点を、弁護士がわかりやすく解説します。

① 生成AIと著作権の関係とは?学習段階と生成・利用段階を弁護士が解説

生成AIと著作権の問題を考えるうえでまず大切なのは、「場面によって著作権のルールが異なる」ということです。生成AIをめぐっては、大きく分けて二つの場面があります。

 

一つは、AIが大量のデータを読み込んで学習する「開発・学習段階」、もう一つは、私たちがAIを使って文章や画像を作り出し、それを利用する「生成・利用段階」です。この二つの場面では、著作権の考え方が大きく変わってきます。

たとえば、AIに学習させるためにインターネット上の文章や画像を読み込ませる行為と、AIが作り出した成果物を実際に使う行為とでは、著作権法上の扱いが異なります。

 

この違いを理解しないまま「AIだから何でも自由に使える」と考えてしまうと、思わぬトラブルを招くおそれがあります。

 

まずは「学習の場面」と「生成・利用の場面」を分けて考える、という視点を持つことが大切です。

こうした状況を受けて、文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」という文書を公表しています。

 

これは、生成AIと著作権の関係について、現行の著作権法をどのように解釈すべきかの基本的な考え方を整理したものです。

 

法律そのものではありませんが、実務上の重要な指針として位置づけられており、企業がAIを活用する際にも参考になります。本コラムでも、この考え方を踏まえながら解説を進めていきます。

② 開発・学習段階の著作権リスクについて

まず、AIが大量のデータを読み込んで学習する「開発・学習段階」について見ていきましょう。

 

この段階では、著作権法の「第三十条の四」という規定が大きく関わってきます。

著作権法三十条の四は、著作物を「その表現を楽しむこと(享受)を目的としない場合」には、原則として著作権者の許可なく利用できる、と定めています。

 

少し難しい表現ですが、たとえばAIの学習のように、作品そのものを鑑賞・利用するためではなく、大量のデータを解析して規則性やパターンを見つけ出すために読み込む行為は、この「非享受目的」にあたるとされ、原則として適法と考えられています。

 

この規定があるため、AIの開発・学習のためのデータ利用は、比較的広く認められているのです。

ただし、ここには重要な例外があります。

 

同じ三十条の四には、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には、この規定は適用されない、というただし書きがあるのです。

 

たとえば、特定のクリエイターの作品だけを大量に学習させ、そのクリエイターの作風をそっくり再現できるAIを作るような場合には、権利者の利益を不当に害するとして、この例外にあたる可能性が指摘されています。

 

「学習なら何でも自由」というわけではなく、利用の仕方によっては問題となり得る点に注意が必要です。企業がAIの学習に関わる場合には、この例外の存在も意識しておくとよいでしょう。

③ 生成・利用段階の著作権侵害リスクについて

次に、AIを使って実際に文章や画像を作り、それを利用する「生成・利用段階」のリスクを見ていきます。企業にとっては、この段階のリスクが最も身近で重要だといえます。

 

 

この段階で著作権侵害になるかどうかは、基本的に、AIを使わずに人が創作した場合と同じ基準で判断されます。具体的には、「類似性」と「依拠性」という二つの要素がポイントになります。

 

「類似性」とは、AIが生成したものが、既存の著作物とそっくり、あるいは本質的な特徴が共通していることをいいます。

 

「依拠性」とは、既存の著作物をもとにして(それに基づいて)作られたことをいいます。この二つがともに認められると、著作権侵害と判断される可能性が高くなります。

企業が特に気をつけたいのが、生成AIに指示を出す際の「プロンプト」(AIへの指示文)の使い方です。

 

たとえば、「有名な○○という作家の作風で」「人気キャラクターの△△風に」といったように、特定の作品名や作家名を指定して生成させると、既存の著作物に似た成果物が生まれやすくなります。

 

その結果、意図せず著作権を侵害してしまうリスクが高まります。

 

便利さのあまり安易に既存の作品名や作家名を指定することは避け、生成された成果物が既存の著作物に似ていないかを、公開・利用の前に確認する姿勢が求められます。

④ AIが生成したものに著作権は発生する?

「AIが作った文章や画像に、著作権はあるのだろうか」——これも多くの企業が抱く疑問です。

 

自社がAIで作ったコンテンツを他社に無断で使われたくない、と考えるのは当然のことでしょう。

 

 

結論からいうと、AIが人の関与なく自律的に生成したものには、原則として著作権は認められないと考えられています。

 

著作権法上、保護の対象となる「著作物」は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」とされており、人間による創作的な表現であることが前提となっています。

 

単にAIに「何か文章を作って」と指示して出てきただけのものは、人間の創作的な表現とはいえず、著作物には当たらないと整理されているのです。

 

この場合、そのコンテンツには著作権が発生せず、他人が使っても著作権侵害を主張しにくい、ということになります。

 

一方で、人が創作的な工夫を加えた部分については、著作権が認められる可能性があります。

 

たとえば、AIが生成した素材を土台にして、人間が構成を練り直したり、大幅に手を加えたりして、そこに創作的な表現といえる工夫が認められる場合には、その部分に著作権が発生し得ます。

 

どの程度の関与があれば著作物と認められるかは、個々のケースによって判断が分かれる難しい問題です。

 

「AIで作ったものだから当然に権利で守られる」というわけではない、という点は、しっかり押さえておく必要があります。

⑤ 企業がとるべき著作権侵害の予防策とは?

生成AIを安心して活用するために、企業としてはあらかじめ著作権侵害を防ぐ対策を講じておくことが大切です。

 

ここでは、特に取り組みやすく効果的な三つの予防策を紹介します。

 

 

一つ目は、AIが生成した成果物をそのまま使わず、必ず人の目でチェックする体制を整えることです。

 

生成物が既存の著作物に似ていないか、問題のある表現が含まれていないかを、公開・利用の前に人間が確認する。この一手間をかけるだけで、うっかり著作権を侵害してしまうリスクを大きく減らすことができます。

 

 

二つ目は、社内での利用ルールを定め、従業員に周知することです。

 

「どのような用途で生成AIを使ってよいか」「特定の作家名や作品名をプロンプトに入れない」「生成物は必ずチェックを経てから使う」といったルールを社内ガイドラインとして明文化し、研修などを通じて従業員に理解してもらうことが重要です。

 

ルールがあいまいなままでは、担当者が個々の判断で使ってしまい、リスクの高い使い方が横行しかねません。

 

 

三つ目は、権利侵害が疑われる出力があった場合に備え、記録・検証できる体制を整えておくことです。

 

どのようなプロンプトで、どのような成果物が生成されたのかを記録しておけば、後から「なぜこの成果物を使ったのか」を説明でき、万一の際にも適切に対応しやすくなります。

 

こうした地道な備えは、企業としての信頼を守るうえでも大いに役立ちます。予防策を仕組みとして定着させておくことが、安心につながります。

⑥ 万が一、著作権侵害を指摘された場合の対応について

どれだけ予防策を講じていても、「御社が使っているその画像は、当社の著作権を侵害している」といった指摘を第三者から受ける可能性はゼロではありません。

 

そのようなとき、慌てて不用意な対応をしてしまうと、かえって事態を悪化させてしまうこともあります。

 

 

まず大切なのは、指摘の内容を冷静に確認することです。

 

相手方が主張する著作物が本当に存在するのか、自社の成果物とどの程度似ているのか、そもそも相手方が正当な権利者なのか——こうした点を一つひとつ確認する必要があります。

 

前述した「類似性」や「依拠性」といった観点から、本当に著作権侵害にあたるのかを慎重に検討することが求められます。

 

安易に非を認めてしまうと、不必要な賠償や利用の停止につながりかねません。

 

 

そのうえで、事実関係を整理し、相手方とどのように対応するかを検討することになります。

 

しかし、著作権侵害の成否は法的な判断を伴う難しい問題であり、当事者だけで解決しようとすると、対応を誤ってトラブルが長期化するおそれがあります。

 

指摘を受けた段階で、できるだけ早く弁護士に相談することが、被害や負担を最小限に抑えるうえで有効です。

 

生成AIをめぐる紛争はまだ新しい分野だからこそ、専門家の力を借りることが、結果的に一番の安心につながります。

⑦ 生成AIの著作権リスク対策を弁護士に依頼するメリットとは?

生成AIと著作権をめぐる問題は、法律の解釈が難しいうえに、ルールが日々変化している発展途上の分野です。

 

だからこそ、専門家である弁護士のサポートを受けることには、大きなメリットがあります。

 

 

第一に、自社の利用実態に合った社内ルールやガイドラインの整備を支援できることです。

 

どのような使い方にリスクがあるのかを踏まえ、実務で使える具体的なルールづくりを、法的な観点からサポートします。

 

第二に、契約や利用規約のチェックを通じて、リスクをあらかじめ抑えられることです。

 

生成AIサービスの利用規約や、成果物に関する取引先との契約に潜むリスクを、専門家の目で確認できます。

 

 

第三に、万が一トラブルが起きた際に、迅速かつ的確な対応ができることです。

 

著作権侵害を指摘された場合でも、法的な観点から冷静に状況を分析し、適切な対応方針を示すことができます。

 

生成AIをめぐる法律問題は、専門的な知識がなければ判断を誤りやすい領域です。

 

安心してAIを活用し続けるためにも、早い段階から弁護士に相談し、リスク対策を整えておくことをおすすめします。

⑧ 生成AIの著作権・社内ルールでお困りなら当事務所へご相談を

生成AIは、うまく活用すれば業務を大きく効率化し、企業の競争力を高めてくれる心強いツールです。

 

しかし、著作権をはじめとする法的なリスクを軽視したまま使い続けると、思わぬトラブルに巻き込まれ、企業の信頼を損なってしまうおそれもあります。

 

リスクを正しく理解し、適切なルールのもとで活用することが、生成AIと上手に付き合っていくための鍵となります。

 

 

当事務所では、AIや知的財産に関する法律問題にくわしい弁護士が、生成AIの社内利用ガイドラインの作成から、著作権リスクの点検、利用規約や契約のチェック、トラブルが生じた際の対応まで、幅広くサポートいたします。

 

「生成AIを導入したいが、何に気をつければよいかわからない」「社内ルールを整えたい」といったご相談も歓迎いたします。

 

 

生成AIの著作権や社内ルールでお困りの際は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。貴社が安心してAIを活用できるよう、専門家として全力でサポートいたします。まずはお気軽にお話をお聞かせいただくことから、始めていただければ幸いです。

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弁護士 川村勝之

大学院時代には労働法を専門的に学び、弁護士となる。2015年にリフト法律事務所を立ち上げる。法律に関する知識に加え、IT関連の知識やコーチングの知識にも造詣が深く、多数の企業の顧問弁護士を務める。

 

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